第八回007 TV吹替声優紹介〜第三期 ボンドガール〜
 

 第三期のボンドガールの声はバラエティに飛んでます! 清楚なお嬢様タイプから、妖艶な熟女タイプ、そして女豹のようなワイルドなタイプまで、良い娘・悪い娘・普通の娘が集合。それじゃあ、ド~ンといってみよう!!

 

 『ユア・アイズ・オンリー』のキャロル・ブーケは、ソルボンヌ大学出身の才媛で、ルイス・ブニュエル監督の『欲望のあいまいな対象』に出演して名優フェルナンド・レイにバケツで思い切り水をぶっかけた後、本作に出演。
 その声を演じたのは、ジョディ・フォスターやジュリア・ロバーツのFIXとしても知られる戸田恵子。元気な女性の声が多い彼女ですが、本作では演じるブーケのイメージに合わせて、清楚かつ芯の強さを声で表現しています。アニメの吹き替えも多い方ですが、洋画ではまったく異なる演技で、自然なせりふまわしが素晴らしい。爽やかなお色気も点数高いですよ。野沢那智氏の劇団薔薇座で活躍していた方ですから、上手いわけです。決してアンパンマンの顔は浮かんできませんから(笑)

 

 

 『オクトパシー』には、『黄金銃を持つ男』のモード・アダムズがメインのボンドガールに出世して再登場。ちょっと年齢高めのボンドガールですが、ムーア=ボンドもお歳を召したので、バランスはちょうどいいやね。エキゾチックな顔立ちと、女盗賊団の長という役柄もあって、お声のほうも、そのキャラにふさわしい方が必要です。そこで、演出を担当された小山悟さんのイチ押しにより、ベテランの来宮良子が登板! 吹替洋画の黎明期では、クールビューティのスター女優の声を多々アテていらした方です。近年はナレーションが多いので、誰もがお声を聞いたことはあるはず。低音のお声がミステリアスなムードも醸しだし、他のボンドガールとは一線を画したキャラクターとなっています。

 

 

 さて、ここからは三連発。といいますのも、全作品ともボンドガールの声が勝生真沙子なんですな。
 『美しき獲物たち』のタニヤ・ロバーツは、「チャーリーズ・エンジェル」つながりで戸田恵子になるかと思いきや、戸田氏は『ユア・アイズ…』に出演済みなので、あえてキャスティングを別にしたのかもしれません(「チャーリーズ」が別の局だったので、対抗意識みたいなものもあったかも)。彼女が登場したシーンでの、落ち着いた勝生氏の第一声は本当に素晴らしい! 吹替調ではない、スッと出る発声に驚きました。その後も、トーンが強くなりすぎず、耳に心地よいせりふ回し。
 彼女の声は高音で張りがあり、かなり個性的です。そんな声でありながら、ナチュラルな喋りの演技ができるので、画面の海外女優の個性に負けない印象を残すことができるんですね。洋画吹替の世界で大活躍されているのもうなずけます。
 『リビング・デイライツ』のマリアム・ダボは、演奏家で世間知らずなキャラクターなので、もう少し軽めの演技になっています。必要以上にお色気過剰にならない点も、キャラに合っていました。
 『消されたライセンス』では、CIA局員のキャリー・ローウェルを、放送版・VHS版・機内上映版と、勝生氏は3回担当しています。機内上映版は諸事情で音源が不明のようですが、放送版・VHS版では、美人でもスパイというキャラなので、やや強いトーンで快活に演じていました。3作品を続けて観ると、同じ声でも明確に演じ分けられているのが分かって面白いですよ~。
 日曜洋画劇場版では、『リビング・デイライツ』のマリアム・ダボは深見梨加で、清楚さが感じられてこちらも良いです。『消されたライセンス』のキャリー・ローウェルは田中敦子が演じました。こちらはキャラが強く打ち出されていて、頼りになるお姉さんっぽいイメージです。

 

 

 ここからは二番手ボンドガールの声を紹介。
 『ユア・アイズ・オンリー』のリン=ホリー・ジョンソンは、当時売れっ子だった潘恵子が担当。恐らく、ボンドガール最年少設定なので、可憐な声の潘氏が選ばれたんでしょうね。ブライアン・デ・パルマ監督の出世作『キャリー』のシシー・スペイセクや、同監督の『フューリー』のエイミー・アーヴィング、『13日の金曜日完結編』のカミラ・ムーアなど、ホラー作品のスクリーム・クィーン的な活躍も何気に多い方です。

 

 

 同じく『ユア・アイズ…』から、忘れてならないのはカサンドラ・ハリス。登場して間もなくサンド・バギーに撥ねられて死んでしまう役ですが、当時の彼女はピアース・ブロスナンと結婚した直後。ボンドの妻だったんですな。そんでもって声は沢田敏子。後のMの声である。

 

 

 『美しき獲物たち』は、黒豹のようなグレイス・ジョーンズが登場。ちゃんとボンドとのベッド・インもあるので、立派なボンドガールでしょう!
 その声を演じたのは山田栄子。デビュー作は世界名作劇場の「赤毛のアン」ですが、その後はマニッシュな女性の声を担当することが多いです。アラン・ルドルフ監督の『メイド・イン・ヘブン』では男装したデブラ・ウィンガー演じる天使長の声、TVシリーズ「怪奇ゾーンへようこそ」の1エピソードでは、性転換した元・男性の声… 斜め上ですね! でもこういったキャラの声にはドンピシャではまるのが凄いんです。

 

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